1階3列目32番という奇跡の良席は、まさか『マンマ・ミーア!』のペッパーを堪能できる隠れた特等席だった!目と鼻の先で炸裂した菊池俊さん演じるペッパーの“チャラオーラ”と、俳優の人間味に心ごと撃ち抜かれた熱狂の一夜をレポートします!

チケット入手の経緯と決断
もともと2025年12月3日に日帰りで『マンマ・ミーア』名古屋公演を観に行く予定だった。ふと翌日12月4日のチケットを見てみたら、まさかの1階3列32番が空いているではないか。こんな席、なかなかお目にかかれない。ちょっと悩んでチケットを取ることにした。

こうして名古屋1泊2日の滞在が決定。S席2回分、ホテル、移動費……。物価高のこのご時世、なかなか手痛い出費だ。
まあ、いい。11月は忙しかったし、ドナの台詞ではないが「私には休暇が必要」だったので、贅沢しようと決めた。
前日との落差が生んだ奇跡の良席
12月3日の公演は、前に大柄の男性が座っていて視界が……。まったく見えないわけではないが、常に視界に入ってくるというなんとも微妙な気持ちで(こればかりは仕方がないが……)観劇を終えた。
そんな気持ちを引きずりながら、翌日この席である。まず席の前にいって、「近っ!」と思わず声に出た。**ステージまではわずか3mほど。**もうステージが文字通り目と鼻の先である。
さらに、ここはサイドブロックのほぼ端の席。前に人が座っているとはいえ、真正面の視界を遮る前の席が2席しかないため、ほとんどストレスがない。前日の体験があっただけに、この視界のクリアさには感動を覚えた。
そして、この奇跡の良席は、私を菊池俊ペッパーの虜にする**「ペッパー席」**となったのだ。
菊池ペッパー、チャラオーラの洗礼
菊池俊のペッパー。1幕冒頭で初めて登場したときからもうそのチャラオーラが際立っていた。ターニャに対する挨拶の圧がすごい。ターニャに対面して向ける獲物を定め、絡みつくようなねっとりとした目線といい、ウィンクといい、くいっと上がる眉の動きといい、すべてがホスト的で強烈な個性を放っていた。あまりの強烈さに思わず吹き出しそうになった。一瞬ホストクラブに迷い込んだかと錯覚するほどだ。
このシーン、席からはターニャの背中を見ることになり、表情を見れなかったが、あのチャラチャラ攻撃にターニャ役ベテランの八重沢真美がどんな表情で対応していたのか、気になる。
菊池ペッパーは、所作というか動作もいちいちトリッキーで目が離せない。
2幕の冒頭。パンツ一丁でヴレヴを歌いながらスカイとエディと登場するときも(いつも思うのだが、このときこの3人は何をやっているのだろう。朝まで酒を飲んでバカ騒ぎしていたということか。)先頭の菊池ペッパーはバネの効いた海老のように身体を揺らしてジャンプしながら登場するのだが、なかなか滑稽だ。肩に掛けた網が滑り落ち、菊池の半裸が露わになる瞬間。かわいい顔をしている割には、シックスパックに割れたきれいな体をしている。胸板でかいな
ペッパー席の特権:顔が目の前に来る!
特に最大の見せ場である「お母さん知ってるの?」のシーン。菊池ペッパーの魅力を堪能できる。
例えばターニャに相手にされずに震えるのだが、縦方向に高速で小刻みする様子は、「ホントに残念がっているのか?」と思うほどのわざとらしさで目が離せない。
この席はターニャにたしなめられて地面に崩れるペッパーを眺める特等席となっている。ペッパーのソロダンスで最後の連続ジャンプして崩れ落ちたとき、その顔が目の前に迫るのだ。目線の先にペッパーの顔がくるまさに「かぶりつき席」なのだ。
踊り切ってへたっているところに、ターニャにお尻を叩かれて持ち上げられる。その瞬間の表情たるや。「あっ」とマイクに乗らない声をあげながら、なんとも嬉しそうに「お呼びっすね」と言わんばかりの表情には、確かなMっけを感じてとても良き。ペッパーの変態具合を非常に上手く表現していた。私の性癖を歪めてないか、ペッパー……。
俳優の人間味と親近感
これは前席ならではの特権であろうが、俳優の人間味を感じることができる。ソロを踊って床に倒れた後の菊池ペッパーの額から滴り落ちる一滴の汗。地面を這いつくばりながらエディと話しながら、さりげなく指で鼻を拭う姿を見て、ああ、彼も人間なんだよな(当たり前)と、一気に親近感を抱くことができた。
菊池ペッパーの細かな演技と役への没入
これは全体にも言えることだが、台詞を発していないときでも、細かな演技をしていて、それが見えたものよかった。「アイ・ドゥ、アイ・ドゥ」でも、ターニャと踊ろうとしてアリに邪魔され、チェッと地団駄を踏んだあとに、気が回ってきてターニャとダンスするときの嬉しそうな顔の落差も良かった。カーテンコールではクールな表情だが、ターニャが出てきたときに最高の笑顔になるなど、役への没入ぶりに、さすがと唸った。
ペッパー席は「音響席」であり「ソフィ席」でもあった
劇団四季の音響は、音が前からしか出なくて立体的でないと感じることがあり、大阪で『ウィキッド』を観たときは、チープ過ぎてカラオケ音源で歌っているのかと思わせるほどで、これでは俳優があんまりだと思った。だがこの席は、スピーカーがマジで目の前にあるのだ。音を直で浴びることになるので、そりゃいいに決まっている。
そして、この席はサムの歌を堪能できる席でもあった。『S・O・S』や『離婚』ではサムが目の前で歌うのだが、梅津サムの生声がダイレクトに体に伝わってくるという、なんとも贅沢な席だった。
ソフィが目の前に座る席(通称ソフィ席)の近くでもあり、文字通り舞台のふちにきて体育座りする。三平ソフィが目に涙を浮かべているのもしっかりと見ることができた。あまりにも近すぎて舞台と客席の壁がなくなって、『マンマ・ミーア』の世界に入り込んでしまったような不思議な感覚がして、なかなか体験できない体験をした。
その他のキャストの魅力
他のキャストの話も軽く触れると、
ハンドコ・アクアリオのエディ。彼も長くこの役を演じてきただけあって安定感が桁違いだ。彼の持つエキゾチックな雰囲気が独特の色気を発していて、ちょっと大人なエディだった。
ただ、ペッパーとのバランスを見ると、このチャラチャラ菊池ペッパーよりも、ターニャに一途で「犬系男子」のような純粋さを持つ森田ペッパーのほうが、ハンドコエディの大人びた色気と良いバランスだったように思う。
そういう意味では、キャスティングされているにも関わらず、一向に出演する気配のないエディ役の嶺山秀平。前回の名古屋公演(2015年)で彼の爽やかな好青年なエディを観ていた。嶺山エディの爽やかさが、チャラさの権化である菊池ペッパーと絡むといい塩梅になるのではないかと勝手に思っている。少し心配であるが、まあ将来の楽しみにしておこう。
そして江畑ドナ。相変わらず歌もさすがで演技もそつない。そして今日は、「ワン・オブ・アス」が最も良かった。さらっと聞き流すことが多いのだが、何気に隠れた名曲だと思っている。今回はスピーカーから流れてきたメロディと、「ひとりのとき〜♪」と歌い出す時にあまりの美しさに思わず鳥肌が立った。
結論:化学反応が止まらない!
いやはや、しかし今回の公演はペッパーを堪能するというなかなか稀有な鑑賞体験となった。
森田一輝ペッパーはとにかくターニャにゾッコンで**「犬系男子」**のような可愛さがあって良かった。一方、菊池ペッパーは森田とは系統が違うが、あの体から溢れ出るチャラオーラが癖になる。どちらも甲乙付けがたい。今期はペッパー役が上質だ。これは通ってしまうな……。
私とペッパーの間に化学反応が起きている。
さあ、私のお財布が火を吹くぞ。



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