伊藤駿佑さんのシンバを見に行った。
今回は上手サイドブロックの最前列から鑑賞した。目と鼻の先にシンバが来ることもあれば、近すぎて、死角や照明で見えなくなる場面もある。だが、この席は伊藤シンバの身体の表現が見えやすい席だった。

最前列の臨場感—サークル・オブ・ライフ—
まず冒頭の「サークル・オブ・ライフ」では、プライドロックの正面が、目線の高さに来た。頂上を見上げる動物たちと同じ目線になり、まるで自分も動物の大群の一匹になってシンバのお披露目の場で祝っている感覚になった。
ハクナ・マタタ
ターザンロープで滑空してきたシンバが、腰を深く落として大地を踏みしめる。猫背になった身体に、すっと軸が通って立ち上がり、両腕を大きく広げて「心配ないさ!」と歌う。この席からは身体を斜めから見ることになり、その立ち上がっていく過程が立体的に見えた。故郷を追われたシンバが、新しい場所に根を張り、喪失を「ハクナ・マタタ!」と吹き飛ばしているようだった。
終わりなき夜
このシーンは照明の効果も相まって、身体の表現が際立って見えた。夜のジャングルで一人で歩くシンバ。彼を照らす光がその身体に深い影を落とす。
夜明けはいつ訪れる?
身体を方向転換して、上半身をぐっと屈める。影は身体をより黒く染める。その姿は孤独に見えた。父の姿を求めて深く沈んでいくようだった。どこにいけばいいかわからない。その迷いを詰め込んで、シンバは一歩を重く踏み出していく。
やがて夜明けとともに、シンバの身体が変わっていく。地に足をつけたまま、身体に一本の軸が通っていくように見えた。光の道を一歩一歩、確実に歩いていく。
愛を感じて
ペアは空良ナラ。前回もこのペアだったが、息はぴったりだった。獲物としてプンバァを追いかけていたナラと、プンバァを助けようとするシンバの対決シーンでは、ナラの素早い蹴りを、シンバは高い跳躍で避ける。
「愛を感じて」では、シンバの顔は死角でほとんど見えなかった。その分、手を差し出されたナラが頬を緩ませ、乙女の顔になる瞬間を目撃できた。
お前のなかに生きている(リプライズ)
伊藤シンバのダンスシーンが生きる名場面だ。ムファサの幻影と会い、プライドランドへ戻ると決めたシンバは、呪縛から解放されたかのように、上手から下手へと走りながら跳躍。長い滞空時間や力強さが軌跡となって、観客へと迫ってくる。
大地を踏みしめたからこそ、その跳躍はどこまでも高く長く感じられた。
そして、ハイエナたちとの戦いでは、ジャンプ蹴りを繰り出し、受け流していく。倒したあとは、両腕を広げ、指を鉤爪のように曲げて、吠えるような威嚇の構えをとる。
王の帰還
スカーを倒したあと、プライドロックを一歩一歩踏みしめて登る。そして最後の一歩、それまでの重みを解放するかのように、小さくジャンプして頂上に立ち、雄叫びを上げる。
今日この席から見えたのは、踏みしめる身体と、跳ぶ身体。踏みしめた重さが、そのまま跳躍の高さになっていくシンバだった。


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