【観劇レポ】誠実さが、舞台を照らす──劇団四季『ガンバの大冒険』オンデマンド配信

観劇レポート

劇団四季『ガンバの大冒険』のオンデマンド配信が2026年6月30日まで行われている。 もちろん、ガンバ役が伊藤駿佑だったから観た、と言ってしまえばそれまでだ。

2026年2月に『ライオンキング』シンバでデビューして以来、すっかり虜に。だから正直に言えば、ガンバも彼が主演でなければ観ていなかったかもしれない。 でも、そんな不純な動機で観た配信だからこそ、書いておきたいことがある。

作品について、正直に

『ガンバの大冒険』は、斎藤惇夫の児童文学を原作とした劇団四季の児童向けミュージカルだ。 ドブネズミのガンバが仲間たちとともに旅をし、強大な敵・イタチと戦う冒険譚。テーマは明快で、「現状維持の安心から、一歩踏み出す勇気」というメッセージは、子どもたちにも、日々の仕事に疲れた大人たちにも、確かに届く言葉を持っていた。

ただ、率直に書く。 キャラクターの数が多い割に、一人ひとりの掘り下げが浅いと感じた。命を落とすキャラクターがいても、その死に十分な重みが与えられないまま、物語が進んでいるような印象を受けた。展開もベタで、「告白は帰ってきてから」というフラグを立てた直後に悲劇が訪れるあたりは、予定調和の域を出ない。 そして、ひとつ引っかかったことを書いておきたい。ラストにガンバは、大切な存在を失ったあと、あまり時間をかけずに「前へ」進む。悲しみに時間をかけることを許さない物語が、子どもたちに何を届けるのか——それだけが、少し気になった。

それでも、潮路(岩井千秋)が、遠く離れたガンバに向けて歌うシーンは美しかった。「離れていても怖くない。だってあなたがそばにいるんだもの」──物理的な距離を超えて、誰かが心の中に生き続けるという感覚。そのメッセージだけは、柔らかく胸に残った。

伊藤駿佑という誠実さ

作品への不満を書き連ねたけれど、それでも観てよかったと思っている。 伊藤駿佑が、そこにいたから。 特に映像だからこそ見えた彼の表情のひとつひとつを追うことができた。

冒頭の場面が忘れられない。 平和な日常に幸せを感じながら、同時にどこかつまらなさを感じているガンバ。彼は笑っている。でもその笑顔の奥に、眉間にかすかなしわが寄る瞬間がある。歌詞がつまらなさを歌い出した刹那、表情がそっと変わる。 計算しているようには見えなかった。 歌詞の意味をちゃんと受け取った結果として、顔が変わっているように見えた。

伊藤ガンバの歌は伸びやかで、ダンスは力強さの中に丁寧さがある。「丁寧」というより「まっすぐ」、でも「まっすぐ」とも少し違う──言葉を探して、たどり着いたのは「誠実」だった。 キャラクターの内面に誠実に向き合い、歌詞の一言一言に誠実に向き合い、自分自身の身体に誠実に向き合っている。それが技術というより、姿勢として、在り方として、舞台の上にあらわれている。

シンバを観たときも感じた何かが、ガンバで確信に変わった。 伊藤駿佑という俳優の魅力は、役への誠実さにある。 その誠実さが、作品の粗さの中でかえって際立って見えた──というのも、また正直なところだ。

誠実に舞台と向き合う俳優を観ていたら、自分も誠実に書かずにはいられなかった。不満も、モヤモヤも、それでも届いたものも、全部ひっくるめて。

キャスト
ガンバ 伊藤駿佑
マンプク 浦⼭遥
ガクシャ 荒川務
ヨイショ 狩野勇⼈
イカサマ ⼩野⽇歌⾥
バレット ⼭⽥祐⾥⼦
シジン 有賀光⼀
ボンヤリ 梅村令悟
オイボレ 堀⽶聰
忠太 髙草⽊健⼆
潮路 岩井千秋
七郎 遠藤⻯也
ツブリ/忠太の⽗ 三宅克典
ノロイ ⽚⼭怜也

[アンサンブル]
イダテン 中⻄⾶希
多⽐良⿓⼀
⽥野井⼤登
上野⼭僚太
⼤寺葉⽉
湯川紗奈

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