【観劇レポ】劇団四季『ライオンキング』伊藤駿佑シンバ 2回目|デビュー1ヶ月で深まった親子の絆と、野生味を増したライオンの動き

観劇レポート

💡この記事3つの見どころ

デビュー1ヶ月の確かな進化: 野生味を増した身体表現、さらに深みを増した感情表現——伊藤シンバの「今」を目撃した記録。

渡辺ムファサ×野﨑ヤングシンバが生んだ親子の絆: 溺愛する父とあどけない息子の絆が、「終わりなき夜」の伊藤シンバに静かに繋がっていく。

初めて「一人のシンバ」として繋がった: ヤングシンバと青年シンバが今回初めて同じ人物として見えた、その理由とは。

2月にデビューを飾った伊藤シンバ(伊藤駿佑)。週間キャスト発表で「伊藤駿佑」の文字を見つけるだけで、思わずニヤニヤしてしまうほどには好きだ。デビュー3日目に観劇(レポートはこちら)。そこから約1ヶ月半、4月4日(土)に2度目の伊藤シンバを観た。——そこには、確かな進化があった。

キャストが織りなす新たな「プライドランド」

前回からメインキャストも何人か変更。

まずは北村優スカー(前回は北澤裕輔)。北澤スカーが隙のないスカーなら、北村スカーは憎めないスカーだ。見せ場の1つ「覚悟しろ」で、もうすぐ自分が王になれると陶酔する姿や、憎きシンバへの複雑な感情—台詞の端からどこかやさしさも感じさせるーが、人間臭いスカーのアンビバレントな魅力が光っていた。

ムファサ役には渡辺吾郎が登場(前回は宇龍真吾)。ヤングシンバ役の野﨑航士郎は前回と同じだ。

ムファサが変わるだけで、舞台の印象はがらりと変わる。宇龍ムファサは、シンバと接するときも常に王としての威厳を保ちながら、その裏に愛情を滲ませるタイプだった。一方、渡辺ムファサは、とにかく息子を溺愛する。「可愛くて仕方がない」という感情が、言葉の端々からあふれ出してくる。デビューしたての野﨑ヤングシンバのあどけなさが、その溺愛をさらに引き立てていた。

「父の愛」が繋ぐ、二人のシンバ

客席からの写真。今回は、1階6列27番にて鑑賞。

圧巻だったのは、第1幕のハイライト「お前の中に生きている」だ。

ムファサが王の象徴の仮面を外し、純粋な「父」としてシンバと向き合うシーン。シンバもまた若きプリンスとしての立場を脱ぎ捨て、ただムファサの子供として甘える。社会的な仮面から逃れ、親子としてだけ存在できる、唯一の時間。野﨑ヤングシンバが無防備に抱きつく姿と、渡辺ムファサの溢れる愛情——その組み合わせが、二人の絆をより一層リアルに感じさせた。

そしてこの「愛された記憶」が、第2幕の伊藤シンバの演技に深みを与える。

魂が震える伊藤シンバ「終わりなき夜」

「星あかりさえ、すでに消えて——僕は今独り」

弱々しい声、震える語尾——いまにも消え入りそうだ。やがて、自分を置いていったムファサへの悲しみが、歌声となって溢れ出す。

「求める時は必ずいると、貴方はいつも誓った。」

父を求めて空へ腕を伸ばす伊藤シンバ。抑えきれない感情が溢れ出し、喉の奥が震え、拳を握りしめる。その瞬間、渡辺ムファサに抱きしめられていた野﨑ヤングシンバの姿が重なり、胸が熱くなった。

消え入りそうな声の震えから、「そうだ、そうなんだ」と一気に力強さを取り戻す瞬間。希望を確信し、一歩一歩を踏みしめながら前へ歩いていく。その鮮烈な対比に、終始鳥肌が止まらなかった。

野生を纏う身体性と、唯一無二の「まっすぐさ」

伊藤シンバの魅力は、その高い身体能力にも現れている。ナラとの格闘で見せる重力を感じさせないしなやかな跳躍、振り向くときに猫科特有の「グリン」と円を描くように首を動かしてから対象を凝視する仕草、怒りを爆発させる際に首をブルブルと震わせながら全身で感情をあらわにする動き。

ライオンとしての所作ひとつひとつが、前回よりさらに野生味を増していた。思わず息をのんだ——ライオンを目にしたときの気高さと野性が共存した、あの抗えない感覚を思い出した。やはり、ダンサー出身の所以だろう。

しかし、彼の最大の武器は技術以上に、その「まっすぐさ」にある。歌も、演技も、踊りも、すべてにおいて嘘がない。だからシンバの心情がダイレクトに伝わってくる。デビューから1ヶ月が経っても、その歌は丁寧で、素直で、やさしい。

総評:シンバというひとりの「人生」に出会えた日

野﨑ヤングシンバと伊藤シンバ——二人が共通して持つ純粋さが、今回は絶妙に調和していた。

これまでは、ヤングシンバと青年シンバをどこか切り離して観てしまうことが多かった。しかし今回初めて、二人が同じ「シンバ」というひとりの人間として繋がって見えた。嘘のない自然体の二人だからこそ、生まれた体験だったと思う。

伊藤シンバは、間違いなく彼の「当たり役」だ。この先、彼がどのように王としての風格を積み重ねていくのか——その進化から、今後も目が離せない。

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