伊藤シンバ、3か月ぶりの凱旋――硬さが解けるまで

観劇レポート

伊藤シンバがサバンナに帰ってきた。
6月10日~7月16日まで『ジャック・オー・ランド ~ユーリと魔物の笛~』に出演しており、シンバを演じるのは約3カ月ぶり。
元々は、大鹿礼生がシンバを務める予定が、伊藤駿佑が出演。
急遽降板の大鹿さんも、1週間足らずでの登板の伊藤さんも心配だ。そんな不安を胸に劇場へ向かった。

「ハクナマタタ」――心配のないシンバの帰還

1幕ラストの「ハクナマタタ」。ターザンロープで降りてくる際にたてがみが一瞬引っかかった(ように見えた)。その影響か「心配ないさ」の音程が乱れたような気がした。
しかしそれ以降は、軽やかな側転。しっかり大地を踏みしめ、伸びやかな「ハクナマタター」と歌声を解放していく。頬はすっと緩み、目をキラキラさせて弾けるような笑顔で、舞台上を跳び回り、気づけば幕は閉じていた。
まったく心配のないシンバが戻ってきたのだ。

久しぶりの伊藤シンバ。やはり歌声がよい。聞いていて安心感をもたらすような心地よさがある。

「終わりなき夜」――細い糸が雄大な道になるまで

歌い始め、以前は消え入りそうな震えがあったが、今回は、か細い声に一本の細い糸でかろうじて繋がっているような歌い方。

星明かりさえ どこかに消え

音程が上がるときに、わずかな掠れ。耳を掠める。掠れの中に倍音が含まれていて、思わず唸った。後半になるにつれて声量は大きく。糸は雄大な道へと変わっていき、響きが観客の身体を揺らした。

空良ナラとの再会――芯のある声とまっすぐなシンバ

ナラを演じるのは空良。求婚を申し込むスカーに引っ掻きを浴びせ、睨みを利かせる。今まさに飛び掛からんとするかのように。単に凶暴ではなく、凛とした気高さがある。
「シャドウランド」の破壊力。劇場を揺らすような圧倒的な音圧と、揺るぎのない意志が伝わってくる芯のある歌声。

伊藤シンバとの相性もよい。一本芯のあるナラと、まっすぐなシンバだ。再会を心から喜びあい、跳ぶ。
伊藤シンバの空良ナラに語りかける声。
「なに?なにか言いたいことがあるみたいだけど」
なんて優しい声なんだろう。

「愛を感じる」も伊藤さんの心地よい歌声と、空良さんの芯のある歌声が支え合い、柔らかなハーモニーを生み出す。

愛し合うなら私を信じて

ナラの歌声に、心動かされたのか何とも言えない表情で返す伊藤シンバ。

ナラに触発され、思わず感情が昂ぶってしまったのか、伊藤シンバは身体を激しく震わせ、唸り声を上げる。

「お前の中に生きている リプライズ」――過去から学び、故郷へ

星空に浮かぶ父の姿を見た時、伊藤シンバは驚き、つぶらな黒い瞳を大きく見開く。
その時、一幕の「お前の中に生きている」で中本開智ヤングシンバが、父と笑い合い、星空を見つめた目と重なった。

星空に浮かぶムファサの影が消えたあと、
「行かないで、ひとりにしないで」――顔をくしゃっとさせたシンバは力なく座り込んだ。
ラフィキの棒が一発。「過去から逃げるか、学ぶか」。次の瞬間、ニヤリと悪い顔になって棒を奪い取り、まるで悪戯好きのヤングシンバに戻ったようだ。故郷へ戻ると宣言する。
その瞬間、アンサンブルが舞台に彩りを連れて戻る。シンバは跳び、回転し、宙に身を投げ出し、大地を駆け抜ける。そして、真ん中でぴたりと止まる。

父も祖父も

全身にあふれていたエネルギーが、その一点に凝縮されていく。汗に濡れた身体が光る。
視線だけが、まっすぐ上を貫いていた。

決闘、そして戴冠――共生の王として

プライドランドへ舞い戻ったシンバは、
スカー(髙橋基史)に、「ムファサの死の責任は誰にある?」
と問いかけられ、つぶらな眼の奥が曇った。だが、その眼にはもう過去の迷いも無かった。

そして、ハイエナたちとの決闘シーン。伊藤シンバの高い身体能力の見せ場。回転蹴り、軽やかに跳び、ハイエナたちと激闘する。やがてスカーとの最終局面。「ここから立ち去れ」。怒りが燃え出すのを抑えながら命じた。

すべてが終わり、シンバは王位につく。プライド・ロックを一歩一歩踏みしめて登っていく。たてがみを揺らし、時に仲間たちを見つめ、頂点ヘ。そして貫くような咆哮。その瞬間、王国に動物たちが戻っていく。伊藤シンバは動物たちに深く礼をする。その瞬間、ムファサがヤングシンバに掛けた言葉が響いた。

「王として、生きとし生けるものすべてを尊重しなければならない。」

今やプライドロックの頂点に立つライオンは、共生の王だった。

カーテンコール

最後にカーテンコール。デビュー直後は硬かった笑顔が、いまでは満面の笑みで、ずっと柔らかくなっていた。最初の不安は吹き飛んでいた。伊藤シンバはサバンナにすっかり馴染んでいた。

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